ただいま美老園本店2Fギャラリー杜で開催中の「古美術展」。
今回は100点以上の作品を展示しておりますが、少しだけ作品のご紹介をさせていただきます。
まずはお茶碗から。
●安南 絞手茶碗(箱付) 15世紀・ベトナム
格別にコンディションの良い作品。
宮廷用に作られたもので、当時の位の高い人々が茶碗として使用していたと思われます。
輸出用に作られていた他の染付茶碗と並べると色や風格がまったく異なっております。なかなか写真では表現できないので、ぜひこの機会にご自分の目で見ていただくことをおすすめいたします。また、同手のものが東京の根津美術館にも展示されています。
●李朝初期 熊川茶碗(箱付) 15世紀・朝鮮
縁反りの茶碗は熊川(こもがい)という地名の港から日本に輸出されたため、この手の茶碗を熊川茶碗と呼びます。手で持ちやすく、大きさも使いやすく、口当たりも申し分なしのお茶碗です。
●李朝初期 伊羅保大服茶碗 15世紀・朝鮮
典型的な古伊羅保の要件を備えた茶碗。本来は粗相な青磁であるが、当時の茶人はそこに侘びを見出したのでしょう。肌の手ざわりが少しざらついて「いらいら」することから「伊羅保」と呼ばれるようになったとか。茶人の遊び心が感じられる名前です。
●元 天龍寺青磁刻花文茶碗(箱付) 13・14世紀・中国
釉色の美しい龍泉窯の青磁鉢です。「天龍寺青磁」の由来は、天龍寺を造営のために作られた貿易船「天龍寺船」によって運ばれてきたためと言われています。すいこまれそうな肌の輝き、胴と見込みの刻花文の美しさ。茶碗としても、菓子鉢としてもお使いいただけます。
続きまして、菓子鉢のご紹介です。
菓子鉢としてだけでなく、水指やお料理の盛付、花生など、さまざまな用途でお使いいただけるものも。ただそこに置いてあるだけでも、何気ない日常の空間がまた違った味わいになります。
●安南 染付竹文盤(箱付) 15世紀・ベトナム
安南染付の逸品。絵付けがとても見事です。お菓子がとてもよく映えます。
●宋胡録 青磁桧垣文鉢(水指) 14・15世紀・タイ
サンカローク窯の代表的な青磁の秀作。桧垣文は珍しい。菓子鉢としてはもちろん、塗蓋を付けて水指にしても面白い作品です。
●スコータイ 鉄絵印判文鉢 14・15世紀・タイ
胎土は明らかにスコータイのものであるが、器形と釉下に鉄絵を施す技法はサワンカロークのものです。両窯に交流があったことをうかがわせます。素朴ながら品格のある作品。
続きまして花生です。
●安南 灰釉尺立(花生)(箱付) 14・15世紀・ベトナム
安南陶磁は輸出用として盛んに焼かれましたが、その中でも灰釉の作品は数が少なくとても貴重です。こちらは、杓立としてもお使いいただけます。
●後漢 緑釉井戸肖形 2・3世紀・中国
漢緑釉の肖形陶は当時の生活様式を彷彿とさせてくれます。井戸の形を模した作品。本当の井戸は、屋根が井戸を覆うほどに大きく、釣瓶はもっと小さいと予想されますが、こちらはそれぞれをデフォルメしてあります。2・3世紀の当時に、アーティスト的な感覚で作られているということがとても面白い作品です。
●宋胡録 南蛮花生(箱付) 14・15世紀・タイ
こちらはもともと壺や花生など生活シーンでの用途を持って作られたものではなく、サワンカローク窯のトチン(釜道具)です。このトチンの上に作品をのせ、何度も窯で焼かれていました。再利用を繰り返しており、長い間窯の中にあって、何度も灰を被っているので、意図されていない景色が生まれています。そこに味わい深さがあります。
この他にもさまざまな作品があり、それぞれに歴史とドラマがひそんでいます。
形から昔の暮らしを想像して楽しむのもよし。さまざまなものに見立てて暮らしで使うのもよし。古代の人とつながる作品の数々、ぜひ見て触れてお楽しみください。