私は今年の新茶の時期に入社しました
お茶屋さんで働いてみて、ずっと身近すぎて知っているようで知らなかった事が多く驚く事ばかりです。
まず、今まで「お茶」とひとくくりにしていた植物が、実は品種が100種類以上もあることです!
そして、同じ鹿児島県内でも産地の地形や作り方で味わいががらりと変わります。
それらを茶市場で農家さんや銘柄ごとにひとつひとつ厳選して入札し、さらに社内の官能審査で吟味します。
先日、「ゆたかみどり」「おくみどり」「はるもえぎ」「つゆひかり」「さきみどり」「はるみどり」「さえあかり」を試飲をしたのですが、途中からお茶の味が混ぜこぜになってしまいお茶の審査の難しさを実感しました。
何気なく飲んでいたお茶に込められた情熱やこだわりを目の当たりにして、またお茶の味わいの理由が分かり世界が広がったように感じます
お茶の葉っぱの形状は、最初はどれも同じに見えていたのが毎日見ていると黄色寄りのみどり、青黒いみどり、針金のように細く撚れた形や細かい粉などそれぞれ異なっており、お茶に深蒸し茶と普通蒸しなどがある事も初耳でした。
品種でも味わいがまったく違います。 「やぶきた」という品種はどっしりとした骨太な味わい、さわやかで繊細な「さえみどり」、「あさのか」は朝の草原のような清涼感など…
それぞれの品種にキャラクター性を感じます。
美老園の単一品種を楽しみたい方は「有明産さえみどり」「知覧産あさつゆ」「べにふうき(緑茶・紅茶)」などがございます
その様々なキャラクター性を活かしブレンドした、美老園の代表銘茶「さつまほまれ」。
ブレンドと言っても単純なものをイメージしていましたが、「さつまほまれ」のブレンドはとっても深くて簡単なものではありませんでした。 (その奥深い話は私が経験を積んでから、またの機会に書こうと思います)
そして、その季節に応じて美味しく飲んでいただくために、春夏秋冬で焙煎を変えています。春と冬の焙煎を飲み比べてみたら、またブログでご紹介したいと思います。
種類や産地のお茶を飲み当てる、歴史ある遊び「茶かぶき」(闘茶)をしてみるのも面白そうなのでやってみたいと思います
もう一つ。今年の夏、水出し煎茶 夏物語を初めて飲んだ時、想像以上のまろやかさと美味しさにとても驚きました。キャッチコピーの「水出しでも香る まろやか冷煎茶」に納得です。
↓お茶の官能審査の様子。茶葉の光沢や形状、香気、水色、滋味などの項目で確かめます。
この会社に入社する前は、ペットボトルのお茶を飲むことが多かったです。
入社して忙しさで疲れていた時に、お茶を飲んで気分を落ちつけてと先輩がお茶を淹れてくれました。
私の事を気遣ってお茶を淹れてくれたと思うとその気持ちが嬉しくて、より一層お茶が美味しく感じました。
そして、工場の皆さんが美味しいお茶をお届けするため日々真摯にお茶と向き合い品質管理に取り組んでいるのを目の当たりにしてからは、お茶の袋を開封するとき、その姿が目に浮かび背筋がピンと伸び前向きな気持ちになります。
最近、初めて夏物語を飲み、袋を開けた瞬間ふわっとひろがる香りや水出し茶の想像以上のまろやかさと美味しさに目の前がぱっとひらめくような驚きがありました。
水出し茶を飲むようになってからは、ほうじ茶にシナモンを入れてみたり、緑茶以外の茶葉でもいろいろな水出しを試すのが楽しみになっています。
樹木希林さんが茶道の先生役で主演をされた「日日是好日」という映画があるのですが、目を閉じてお茶の味を五感で感じ心を整えるとき、何も変わらないように思う日でも一日一日がそれぞれに違っていて、移ろう季節の美しさに気づくことを教えてくれるような作品で、取り立てて良いニュースはなくても美味しいお茶が飲めれば良い日になる、そういうメッセージをすっと差し出してくれているようでした。
未来のことを考えると、不安や大変なことも多い世の中ですが、お茶を淹れる時間で心落ち着かせ、飲む事でほっとする癒しになっています。
人生の詫びさび、なんてたいそうなものはまだわからないですが、去年の今頃の私は、転職活動がうまくいかず、何も見えない洞穴のようなところを掘り進んでいるような毎日でしたので、温かくて優しい同僚に出会えたことに感謝しています。
私のようにまだお茶の奥深さを知らない方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。 そんな方へも知っていただけるよう、お茶の魅力を発信して参りますので宜しくお願いします
↓写真は最近お気に入りの「極みほうじ茶」。あかね色の水色が午後の光の中で輝いているようでした。
スタッフ:古山 朝子