お茶の美味しさの源はやはり良質な茶葉。
こつこつと日々お茶の樹に思いを傾ける農家あってこそ、洗練されたお茶が生まれ愛飲され続けます。
その仕入れ方法は二つ。
一つは鹿児島県内の契約農家からの直接仕入れです。長年紡がれた信頼関係で、お茶の栽培から製茶まで、互いの要望や知恵を出し合います。また、昭和40年代から栽培農家と共に「南九州緑茶研究会」という勉強会を開き、先進の栽培法や安全な製茶工程に関して常に研鑽を重ねています。
もう一つは県下一円のお茶農家から旬の時期に連日上場される茶市場での仕入れです。最盛期には一日に1,500点を超える荒茶が出品される中での真剣勝負。一回限りの出会いの茶葉はまさに一期一会。品質の良い茶葉を見る眼力と思い切って仕入れるタイミングが必要です。
いずれの仕入れ方法でも大切にしていることは、茶葉の輝きを感じとること。刻一刻と移り変わる荒茶の旬を見逃さず仕入れること。
品種の旬、グレードの旬、産地の旬。お茶畑一枚一枚にも旬があり、「良いお茶になりたい」「飲んでほしい」というお茶の声に耳を傾けると、芽吹きの時期を迎えたお茶畑が眼裏に映し出されるのです。
心を澄まし、お茶の葉に触れると、私共が大切にしたい旬が鮮やかに見えてきます。
ブレンドはオーケストラのようなもの。
第一バイオリンのように主旋律の味と香りを持つお茶があれば、表情豊かなクラリネット、低音部で奥深さを支えるファゴットのようなお茶もあります。
一つ一つが奏でるリズム、メロディ、ハーモニーをまとめ上げる指揮が私ども茶師の醍醐味です。
たとえば「特選鳳苑」。
農家の同じ品種でも畑によって、摘む日によって、違う茶葉。その良質な茶葉から数十種類を選び抜き、ブレンドを重ねます。お茶は生きもの。その年の気候によっても微妙に変化します。
毎年愉しみに飲んでくださるお客様のためにも、ブレンド力を駆使して「お茶の美老園」の変わらぬ美味しさをお届けしたいのです。
茶師はいつも瑞々しい味と香りのお茶を皆様にお届けすることを信条とします。
それには、お客様の目の前でブレンドし、火入れしたお茶を、その場で飲んでいただくのが理想です。その理想に限りなく近づけるために、まずは保存方法が大切です。
マイナス20度の自社冷凍庫でお茶を一旦冬眠させます。目覚めるのは、火入れのとき。
できるだけお客様のお手元に届く直前に、その日の湿度や温度を見極め、香りと旨みの頂点をめざし製茶します。特に香りには意識を集中して、火力配分をします。
意外に思われるかもしれませんが、香りは普段、無意識の範疇で感じるものらしいのです。そう言えば風邪で鼻が利かないとき、食べ物の味が分かりにくくなります。実は「香り」は美味しさの大きな要素。
心に香るお茶-。
これまでも、これからも一意専心、理想のお茶づくりに励みます。